ある夏の暑い日
あれは 何年か前の暑い夏の事です。
私は釣りが好きだ。といっても船には弱いです。
すぐに船酔いしてしまいます。
だからいつも磯釣りばっかり、それでも満足しています。
私のホームグラーンドは三浦半島や城ケ島です。
決まった魚だけを追いかけて釣りをするのは好きではなく、その日の条件に合わせてその日楽しむ、これが私の釣りです。
その日は城ケ島に磯釣りに出かけました。
朝からエサ取りもあまり来ないでメジナが寄ってきました。
でも釣れるのは決まって小さいサイズ。
15センチ~20センチぐらいの物ばかりでした。
クーラーにつめてきたビールで一休み。
そのうち魚の食い気も無くなり、次の潮まで待つ事になりました。
魚が釣れなくてもここにいるだけで気持ちが良かったです。
3時ごろから潮が戻ってきました。
今日は良い日だなぁ。エサ取りが少なくボチボチ食い始めました。
こんな小さな磯にどこから来たのでしょうか、いつのまにやらアベックがいます。
「楽しそうだ、私にもあんな時があったなー」
などと思いながら釣りをしていまし。
日も少し落ちてきて良いサイズが釣れ始めました。
でも夜釣りまでする気はありませんでした。何といっても磯は危険です。
それはよく知っているつもりです。
私は帰り支度を始めました。
そうださっきのアベックは、あれ?まだいる。
これからが良い所なのかなー。
でもライトがないと(そのアベックは)帰れない。
迷ってはいられない、と思い、私は聞いてみました。
「ライト有りますか?」
やはり持ってはいませんでした。
おせっかいとは思いましたが、
「いっしょに帰りますか?」
と聞いてみると、はいと返事をしてくれました。
私は予備のライトを二人に手渡し、三人で歩き始めました。
少しするともう真っ暗。「明りのある所まではつれていかなければ」と思いながら、ようやく磯の入り口まで来ました。
もう商店街も近いし後ろの二人に別れを告げ、ライトを返してもらおうと思いました。
振り向くと あれ二人いない…
「確か後ろついて来てたよなー」
私は少し戻ってさがしてみましたが、見つかりませんでした。
「しかたがない、あのアベックはライト(予備のもの)を持っているし、そんなに遠くない磯だから帰れるだろう、もう帰ろう」と思い、振り向くと背負子から聞きなれた音が。
さっき二人に貸した予備ライトが背負子の横のポケットにある…
マジックテープをはがさないと入れられないポケットに。
私はだれと帰ってきたんだ、ギャーーなんちゃって。
でも本当の話です。
でもここで怖いのは、二人ではなく、暗い危険な磯だったのでしょう。
早く切り上げて良かったです。